現代の自動車整備に欠かせないスキャンツールとは?

現代の自動車整備に欠かせないスキャンツールとは?

国土交通省が自動車整備技術の高度化を図ることを目的にその普及と導入を進めている「スキャンツール」をご存知でしょうか。スキャンツールとはどのような装置なのか、自動車整備とどう関わるものなのか、その概要を解説します。

スキャンツールとは

スキャンツールとは、自動車の電子システムに故障箇所がないか、あるとすればそれはどこかを調べるための故障診断機のことです。

装置には液晶画面と操作ボタン、自動車との接続用のコードなどが備えられています。PCベース機と呼ばれるものはタブレットほどの大きさで、ハンディー機と呼ばれるものは片手で持つことができる大きさです。

汎用スキャンツールと呼ばれる複数の自動車メーカーの車に使えるものと、専用スキャンツールと呼ばれる特定の自動車メーカーの全車に使えるものとがあり、車の年式等に合わせて様々な種類があります。

スキャンツールを自動車整備に使用すれば、エンジン、ミッション、ブレーキ、エアコンなどのコンピューター制御された電気・電子回路部分の故障箇所を簡単に見つけることができます。

スキャンツールの進化

では、なぜこのような装置が自動車整備に必要とされているのでしょうか。

本来、車の走る・曲がる・止まるといった機能はメカニカル(機械的)な仕組みによって実現されています。しかし、コンピューター制御技術が進化するにつれ、車にもエンジンをはじめとする各部に電気回路や電子回路が採用され、性能アップが図られるようになりました。これらを統合して制御しているのが、車の頭脳とも言えるECU(エンジンコントロールユニット)と呼ばれるコンピューターです。

このECUには「自己診断機能」というプログラムが組み込まれています。車の各部を監視して、不具合があるとその情報をインジケーターなどでドライバーに知らせるというもの。

自己診断機能の歴史は意外に古く、1970年代に入った頃にはすでにマイクロコンピューターを使ったエンジンの燃料噴射・点火制御システムが開発され、簡単な自己診断機能が備わっていました。電気機器、電子機器の故障や劣化は目で見て判断することが難しいため、このような診断機能が必要だったと言えます。

現在の車は昔よりもさらにコンピューター化が進んでいるため、ECUもより複雑で高性能な機能を備えています。スキャンツールは、実はスキャンツール自体が車の故障を探して診断するのではなく、車自体に備わっているECUと接続して、その「自己診断機能」のメモリから故障コードを読み取るための装置です。読み取ったデータはPC等に外部出力して保存したり、さらに詳しい分析を行うことができます。

東京自動車大学校では全メーカーに対応するため、10機種41台のスキャンツールを使い、最新の授業を行っています。

今後のスキャンツールの重要性

国土交通省は、経済産業省資源エネルギー庁と連携して、スキャンツールを導入する整備事業者を支援しています。補助金制度もあり、自動車整備技術の高度化を図ることを目的に、スキャンツールを新規購入する際にその費用の一部を補助しています。

カーナビゲーションが当たり前のものとなり、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車が普及、自動運転も現実のものになりつつある現在、自動車のコンピューター化の勢いが衰えることはありません。車の自己診断機能と、その情報を整備に活かすためのスキャンツールの重要性は、今後ますます増していくと予想されます。

これからの整備士には自己診断機能とスキャンツールについて熟知し自在に操作する技能が求められます。現在のスキャンツールはそれさえ使えばすぐに故障箇所が分かるといった単純なものではなく、整備士が故障コードを読み取り、そこからどのような不具合が考えられるのかを推測するなどの作業が必要です。いまのうちにスキャンツールに関する知識を深めることで、将来、整備士としての仕事の幅も広がっていくことでしょう。

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